第240章 もちろん時間はある

電話の向こうから、貝本直紀の涼やかな声が響いた。それは懐かしくもあり、同時にどこか他人のような余所余所しさを帯びていた。

「橘健吾、私よ。今、帝都にいるの。どうしても直接会って話したいことがあるんだけど、時間は作れるかしら?」

口調は異常なほど深刻だった。

「ああ、大丈夫だ! もちろん構わない!」

橘健吾は一瞬の迷いもなく即答した。具体的な用件など、彼にとっては二の次だった。

彼にとって、貝本直紀と再会できること、それ自体が何よりも重要だったのだ。

半年前、貝本直紀から「あなたはまだ若すぎる。私たち、合わないわ」と別れを告げられた時の衝撃は大きかった。その悔しさをバネに、彼は帰国...

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